こうして、町の風景を仕組みから大きく変える試みをしてきた、
五城目町地域おこし協力隊のみなさん。
その取り組みのなかで、全国的に知られるようになったのが、
「シェア・ビレッジ」という試みです。
柳澤さんは東京都練馬区ご出身。
田舎と言える田舎のない、シティボーイ。
クラウドファンディングで出資を募り、
一口3,000円でだれでも村民になれる
「シェアビレッジ町村」をオープンさせました。
おもに田舎を持たない都市居住者たちに向けてPVなどを作成してメッセージを発信。
「3,000円の年貢を納めれば、あなたにも帰る故郷ができる。さあ、あなたも今が年貢の納めどき」。
このユニークなコピーと、抜群に楽しそうなコンセプトにより、
県内外の20~30代を中心に大きな共感を集め、
4日で目標の200万円を達成。
最終的には50日間で39都道府県の862人から計571万円が集まったといいます。
「シェアビレッジ」を運営しているのは、
秋田県内の若手農家や県内外のベンチャー企業。
さらに五城目町の地域起こし協力隊が支援するという体制で、
運営サイドも出身地や年齢や専門分野も異なるメンバーが集まっているのが特徴です。
村民には、いろいろなイベントがあります。
里帰 SATOGAERI:町村の古民家に宿泊OK
年貢 NENGU:出資金
寄合 YORIAI:出資者によるファンミーティング。県外でも寄合あり。
開墾 KAIKON:農作業などを体験
一揆 IKKI:古民家で行われるイベント
などなど。
うーん楽しい。
2015年9月にはグッドデザイン賞も受賞し、
ノリに乗っているように見えるシェアビレッジ。
2015年5月の開村から半年あまりがたち、
当初の興奮が落ち着いたものの、
継続的に村民の里帰りのリクエストもあるそうです。
現地スタッフの間では、茅葺屋根の保存のための茅刈りなどの
手入れの大変さなどなど、課題はもちろんあるけれど、
自分たちでいろんなことができるのが、とても楽しい、と柳澤さんは語ります。
身体中から、五城目町への愛が溢れている柳澤さん。
その愛は、あまりに一途。
でも、ちょっとやそっとで折れるようなナイーブさは微塵もありません。
やせ我慢ではなく、ここまでの愛を語れるのは、
きっと柳澤さん自身が五城目町に愛されているから。
柳澤さん「僕の場合、年収は東京にいたときの3分の1になりました。
年収が減って困っているのは、読みたい本がすぐに買えないこと。
これはちょっとこたえます。
でも、年収が減っても、ここならとにかく食べるものは困らない。
町のみなさんが丹精込めたものを分けてくださることも多い。
こんなことは東京ではあり得ないわけです。
東京では、お金がないと、絶対に生きていけない。
五城目町には、自然がある。
そして助けてくれる人がいる。
これは本当に他には代えがたい財産です。
本当にうまいものを、最高の場所で食べることができる。
こんなに豊かなことって、ないじゃないですか。
僕は五城目町に本当によくしてもらっていると思っています。
だからもっと町に恩返ししたいし、
よその人にもこの町の良さをもっと知ってもらいたいんです」
ふと、忌野清志郎の歌が頭をよぎりました。
ダイヤモンド 豪華マンション
別荘に 外車に 毛皮に金
何の価値もねぇ 俺は欲しくねぇ
金で買えるものなんか
この世で一番 安っぽいものさ
(中略)
何でもかんでも 金の額で
はかってる馬鹿な奴ら
買えるものは せいぜい俺の歌ぐらいさ
それがせきのやまさ
忌野清志郎「彼女の笑顔」より
柳澤さんの話を聞いていると、こちらの価値観がグラグラ揺らぐのがわかります。
本当に価値があることって一体なんだろう。
少なくともそれはお金ではない、ということを
この人は若干29歳で、体の芯からわかっている。
そんな気がするからです。