猿田さんの熱い思い(続き)

 

猿田 しかし、今の時代というのは、

   そういったことを残すには非常に難しいかもしれません。

   だから今回の『空家ツアー』では参加していただいた皆さんに

   まずはこの現状を知っていただこうと思い、講師をさせていただきました。

 

   私自身、会社を辞めて自営業になるまでは

   なかなか地域に根ざす時間を作れなかったんですが、

   少しずつ足元に目を向けて田舎の良さや地元とのつながりが持てたらいいなって思います。

 

   自営業は大変ですが、ここ男鹿半島の特性を見極めながら、

   考え方次第ではどうにか仕事も作れるようになるだろうし、

   伝統行事も守っていくことが可能なのではないかと。

   何かいい方法がないかとずっと考えていたんですが、

   そのヒントが増え続ける『空家』の問題だったんです。

 

   男鹿半島は皆さんがご存知のとおり、

   真山神社や伝承館などの観光施設やすばらしいロケーション、

   そして観光客の方たちはあまり気づかないかもしれませんが、

   地元に根ざしたさまざまな古き良き伝統文化があります。

   特にシーズン中は全国からたくさんの人が来て、

   おみやげ屋さんもたくさんあるのに、

   実は伝統工芸品や民芸品といったものや作る人があまり多くないんですよ。

 

   だからもし、独立した工芸作家さんやデザイナーさん、

   アーティストさんたちがどこかで活動場所を探しているなら

   空いている家とか小屋、工房があれば、

   事務所や仕事場、アトリエにもなるだろうし、

   そういった方たちに空家の活用をしていただけるのであればとてもにうれしいですよね。

 

   これは田舎の特権ですけど、春になれば山菜もあるし、

   敷地があれば、趣味程度なら畑だってできます。

   子育てもしやすい環境だと思いますよ、比較的。

 

   よく冬の生活が大変じゃないのか? とか言われます。

   まあ確かに大変ですが(苦笑)、

   男鹿半島はたまに大雪の年があるけれど内陸側ほど積雪量も多くはないし、

   もし自分が工芸作家さんなら家にこもって“ものづくりをしたり、

   あとは出稼ぎしますね(笑)。

   個展をやったりイベントに参加したりとか。

 

   できればこういった取り組みに

   地域の人たちや行政も協力してくれたらとてもありがたいんですけど、

 

   まずは自分たちで旗揚げしないと、何も始まらないですから。