はたしてアートが秋田で受け入れられるのだろうか。
「AKIBI plus」のような試みが
秋田でちゃんと発展していくのだろうか。
そもそもシンポジウムに人、呼べてなかったけど……?
一抹の不安を抱えたまま迎えたツアー第1回目を終えた、
男鹿半島の空き家ツアーから1週間後。
ユカリロは
秋田のビジネス&カルチャーニュースをウェブで発信している
秋田経済新聞のチバさんにインタビューを決行しました。
アート×秋田、カルチャー×秋田と
「AKIBI plus」×秋田のこれからについて見えてきたものとは。
千葉尚志(ちば・ひさし)
1967年秋田市生まれ、秋田高校卒、神奈川大学経済学部卒。
フリーランスのウェブ制作者を経て、現在は
ニュースサイト「秋田経済新聞」編集部運営を行なっている。
全国初のご当地版モノポリー「秋田県版」や、ご当地トランプ「なまはげ印の大富豪専用トランプ」「同・
ユカリロ・高橋(以下、高橋):ツアーの前半はとても高かったチバさんのテンションが、
後半どんどん落ちていたように見えたのですが?
秋田経済新聞・チバ(以下チバ):本来ならば秋田経済新聞(以下、秋_経)にしても、
ユカリロにしてもあまりこういう取り組みを批評する立場にはなくて、
むしろ取り組みに「一筋の光」を見ながら、
そこに向けて話を進めて行くっていう視点でやりたいと思うんだけど。
「男鹿半島空き家ツアー」を振り返ると、正直「見せっぱなし」になっちゃったな、と。
参加者のみなさん、ポカーンとしちゃっていたからね(笑)。
地域を知ることは前提として大事なんだけれども、現状を把握して、
それをどうアートと結びつけるか。そのアートとの「つなぎ手」を養成するためのプログラムとして
展開していくわけですよね。でもその要素がほとんど感じられなくて
「男鹿の紹介」に終始してしまったのが残念だった。
それと、見せてもらえる「空き家」も少なかったなぁ。
高橋:空き家ツアーと題して、見られたのは2軒と半分(=外観のみ)でしたものね。
チバ:少ししか空き家を見せられないのならば、ワークショップ的に
もっとみんなで話し合ってアイデアを出したりする場があれば、
もうちょっと「らしく」なったかなって思うけども。
参加したのはアートマネジメントに関しては素人のみなさんだったわけですよね。
僕も含めて。であれば、ツアー中、「アートマネジメント」について、
もう少し解説や考え方のヒントなどを出してもらえればよかったように思う。
よっぽど主体的に考えることができる参加者でない限り、
果たして得るものがあったのか? という疑問があまりにも大きかった。
チバ:僕が秋経を始めた理由の一つに、県外の人から見て、
「なんか秋田っておもしろい地域だね」っていうムードを
ウェブ上で出したいという思いがあったからなん
自分が住んでいる地域、秋田がダメだって他の地域から見られるのは嫌じゃないですか。
そういう意味ではこのツアーの第3回目に組み込まれている
五城目町の「シェアビレッジ町村」はうまくやっていますよね。
愛があるっていうか、周囲を巻き込んで愛を育んでいる感じが伝わってくる。
ブレーンと常駐しているスタッフの均衡・連携が、うまくとれているんだろうなって思いますよ。
ユカリロ・三谷(以下、三谷):五城目のはアートなんですか?
どちらかというと仕組みづくりというか……。
チバ:取り組み自体がアートなんだと思う。
ユカリロ:ほー!!
チバ:人の動きや流れが全部アートの作品として見せられているというか。
なんだろうね、うまさがありますね。
ユカリロ:本当にうまいですよねー!
三谷:あれは五城目への愛が先なんですかね。
男鹿の猿田さんとは事情が違って、県外から来たメンバーが中心になっています。
それともあの古民家があったから?
チバ:きっとね、取り組みに対する愛だったんだろうな。
表に出て関わっている人たちは「こういうことがやりたい」っていうイメージをずっと持っていて、
あのスキームであれば五城目ではなくてもどこでも成功したように思う。
たまたまご縁があって関わった場所が五城目。
五城目町役場の人たちも地域を何とかしたいと、
2~3年前から廃校になった小学校を貸し出したりとかしてやっていてね。
そこの利害が一致して、成果が出せているのでは。
取り組みを愛する人たちが地元にたくさんいるわけさ。
しっかりと
やっぱり、こういう愛がある人がきちんといないと。
編集部注)このインタビューから1週間後、2015年9月30日に五城目の「シェアビレッジ町村」はグッドデザイン賞ベスト100を受賞した。
チバ:もっと生々しい話をすると、地域の活性化をするとなったときに、
古いものを維持するコストよりも再開発したほうが大きなお金が動くからさ。
そういった経済の展望は、商売をしている人たちの視点からは共感を呼びやすいわけだよ。
まとまったお金を動かせないような場合、じゃあアートには一体何ができるの?ということ。
アートが関わる余地といえば、そういうことをくつがえせるだけの提案でないとダメだよね。
男鹿に関しては、地元の経済的な活動やそれを超える展望を見せられていないように感じた。
ただ「この地域のありのままをいかす」という雰囲気作りだけでは多くの人を巻き込みにくいかもしれない。
今回見た空き家2軒も格安とはいえ家賃が発生するでしょう。
お金を払ってまで住むのであれば他の地域という選択肢があるから、
それだけではあの場所が選ばれることは難しい。
だとすれば、お金を払ってまであのエリアに住みたいという必然性を、
合わせて提供していかなければいけないよね。
それを提供するのが、まさにアートマネジメントをする人の役割なはず。
空き家も同じで、藤先生が
「十和田にアーティストが移住してくるようになった」って話をしていたじゃない?(その6「藤先生の話」参照) 十和田市現代美術館ができて、「十和田=アートのまち」っていうブランディングに成功してきた。
小さくてもいいからそうやって成功事例をコツコツ作っていかないと。
人が人を呼ぶ仕掛けを作るということだよね。
高橋:そうですね。案内役を務めてくださった猿田さんの
「男鹿を盛り上げたい」という気持ちに共感して、男鹿に移住したのが
現在ににぎのスタッフ、池内和美さんです。
チバ:そうか! ということは事例がひとつあるんだね。
その人の紹介を前に出しながら次の手につなげていけるといいかも。
三谷:ツアー終盤に、参加者数人にツアーの感想を聞いてみたんですね。
だけどどれも「楽しかったです」という程度だったんですね。
みなさんがSNSに挙げている記事を見ても「行ってきました!」という段階で終わっていて。
体験が言葉になるには時間がかかるというのもあるのでしょうが、
この後につながるきっかけ、つまり“小さな芽”と呼べるものでもちゃんと出ているのだろうかと。
かくいう私自身も、圧倒的な空き家の存在感や生活の匂いばかり心に染みついて残ったものの、
それ以上言葉にできずに悶々としているというか。
チバ:主催者側がお題を与えたら、また変わってくるのかもしれないね。
高橋:そうだ。道中のバスの中で先生方がお話してくださる内容がすっごくおもしろいんです!
アートの基礎知識とかね、こんなにおもしろい話を
周囲にたまたまいた数人しか聞けないのはもったいないなあと思っていたから、
道中の合間に、参加者みんなに向けて話してほしいな。
三谷:「気づきの視点」を一つ与えてもらえると、
同じものを見ていても景色はがらりと変わるよね。
考え方の道案内、私も希望します!
チバ:「育成する」のであれば、そういうレクチャーを挟んだツアーにしたらいいかもね。
高橋:今回、チームユカリロは
“参加者がツアーに参加した感想をまとめる”という役割を担っているのですが、
“4個のお題を出し、宿題として後日提出”という形にしたんですよ。
この4つから「自分でできるところだけやる」ということにしたので、
主体的に選んでもらって、考えてやってもらおう、と。
チバ:勝手に変えていいの!?
高橋:あ。今思いついた!(←まったく聞こえていない)
この宿題に対して先生から講評をいただくっていうのはどうかな?
私たちからはアートの視点をまじえた感想なんて言えないし。
そうだ、そうだ。やってもらおうよ!
三谷:いいねー! それがあると参加者も道筋が見えてくるはずっ!!
チバ:…………(不安そうな顔で2人のやりとりを見つめるチバさん)
むちゃぶりと暴走がもはやお家芸のようになってきたユカリロ。
自分たちが勝手に出した宿題に、美大の先生方まで巻き込み始めたのであった。
というわけで、ユカリロから参加者の皆さんに出した宿題はこちら↓
みなさんも(自分だったらどうする?)などと考えて、ユカリロまで送ってくださいね!
ユカリロからの宿題
お題1 一番印象的だった写真orイラストと、その理由(150文字以内)
お題2 「男鹿半島の空き家問題」を解決するための策(できれば図解など)+説明(150文字以内)
お題3 男鹿の現状または魅力などを、知らない人に伝えるためのポスター・広告・キャッチコピーを作ってください。
お題4 あなたが男鹿でイベントをやるとしたら? 架空イベントのフライヤーを作成してください。