石倉敏明 (いしくら・としあき)
1974年東京生まれ。秋田公立美術大学講師(アーツ&ルーツ専攻)。
多摩美術大学芸術人類学研究所助手を経て、明治大学野生の科学研究所研究員、現職。共著・編著に『人と動物の人類学』、『道具の足跡』、『折形デザイン研究所の新・包結図説』、『タイ・レイ・タイ・リオ紬記』など。
石倉敏明先生(以下、石倉) 司会の石倉と申します。
今日はご来場いただきましてありがとうございます。
今日のタイトル「辺境と芸術」とつけさせていただきました。
副題は「~アートはいかに地方と向き合うのか~」です。
石倉 最初に趣旨を説明させていただきますと、
本校は美術大学でありますが、
「芸術と何々」というタイトルではなく、
あえて「辺境」を最初に持ってきたことに理由があります。
それは、芸術などなくても、辺境化は必ず進んでいくという厳然とした現実です。
人口減少が課題だと言われている秋田だけではなく、日本の切実な事情とも重なります。
石倉 さらに、「地方創生」で地方を活性化しようという動きが近年ありますが、
地方の中でも中核となる都市には、優先的に予算を配布されますが、
限界集落まで税金を注ぎ込めないとなった場合、
「選択と集中」により、「辺境」が「選択されない」という事態が今、起こりつつあります。
では「辺境はもう、なくなってもいいのか」といえば、やはりそうではないはずだ。
そのとき「辺境」をどう捉えるべきなのか、というのは重要な問題です。
副題の「~アートはいかに地方と向き合うのか~」では、
あえて「地域」ではなく、「地方」というワードを使いました。
それは、「地方創生をアートで」という風潮のもと、
全国一律に「地方」という場所が最初からあるかのように語られ、
アートプロジェクトが行われ、さらに美術館や本学のような美術大学が作られていますが、
ではアーティストや、アートに関わる職業に就いた我々は
どう「地方」に向き合っていったらいいのかということが問われているからです。
石倉 まずは土屋誠一さん。
美術批評家で、現在沖縄県立芸術大学で
美術批評や美術史を教えていらっしゃいます。
2014年9月には
という展覧会を企画され、
アンデパンダン形式(無鑑査・無褒賞・自由出品)の美術展で、
大きな話題を呼びました。
土屋誠一先生
芝山昌也先生
石倉 お二人目は芝山昌也さん。
現在は金沢公立美術工芸大学で教鞭を執っておられますが、
昨年まで秋田公立美術大学のアーツ&ルーツ専攻の先生でいらして、
秋田の限界集落である上小阿仁村で
「KAMIKOANIプロジェクト」を開催、
今年で4年目になるアートプロジェクトの
ディレクターでいらっしゃいます。
藤浩志先生
石倉 みなさん地方の芸術大学に所属して教鞭を執っていらっしゃると同時に、
土屋さんは美術批評家、
芝山さんと藤さんはアートプロジェクトのディレクターであり、
かつご自身も美術家としても参加されるなど、
アートに長年かかわってこられた方たちです。
このようなさまざまなお立場から地方とアートの関わりについて見ていきながら、
立体的に見識を深めて、長期的にアートマネージメントを
どうしていったらいいのかということを、
みなさんと一緒に考えていきたいと思います。