皆川嘉左エ門氏とめぐる

県南地域の旅 その④

「食」をテーマに地域を継承する

デリカテッセン&カフェテリア

紅玉さんの取り組み

 

お昼は十文字町の「デリカテッセン&カフェテリア紅玉」さんへ。

 

皆川先生と「デリカテッセン&カフェテリア紅玉」を営む 有限会社たかえん専務取締役・高橋基さんは高校時代の同級生。
皆川先生と「デリカテッセン&カフェテリア紅玉」を営む 有限会社たかえん専務取締役・高橋基さんは高校時代の同級生。
みんなお腹がペコペコ。こういうときは行儀がいい。
みんなお腹がペコペコ。こういうときは行儀がいい。
この日のランチ。ご飯は玄米か白米が選べる。おかわりもOKだったので、両方いただく。
この日のランチ。ご飯は玄米か白米が選べる。おかわりもOKだったので、両方いただく。


「いただきます!」
全員揃って手をあわせる。
目にもおいしそうなお惣菜の数々。
あちらからお味噌汁のいい香りが漂ってきます。

「ここでかんたんに本日のメニューのご説明をいたします」
と、基さんが話し始めました。
そのお話の内容が、よくあるコース料理などの説明とは一線を画す、
すばらしいものだったので、ここに掲載したいと思います。

 

食でつなぐ「地域」の未来

上の段のメニューについてのお話しを掲載します。
上の段のメニューについてのお話しを掲載します。

 

  基さん「右上の切り干し大根は

     佐藤久美子さんという方が湯沢市にある、
     温泉で有名な子安峡というところで作っています。

     今は切り干し大根を専用の乾燥機などで作ることもできるのですが、

     佐藤さんの切り干し大根は、天日で干してあります。

     切り方、絶妙な干し方、素材の良さなどが相まって、

     食感よく、みずみずしい、いい味の切り干し大根なんです」

 


秋田県の味付けは濃いめが特徴で、
なかでも県南は濃くて甘いと言われています。
そんななか、紅玉のこの切り干し大根は
素材の風味を生かすために、調味料は最小限。
噛みしめるとじんわりと出汁の旨みと大根の香りが溶け合うような優しい味です。

 


  基さん「この切り干し大根に限らず、いい素材を使って、
     素材の味を味わえる料理をお出ししたい、
     というのが紅玉を始めたときからの願いでした。

     最初は『高い』『味付けが薄い』といわれて、
     なかなか受け入れてもらえなかったのですが、

     『紅玉さんの、あのメニューが食べたい』と言ってくださるリピーターが

     少しずつ増えてくださって、今があります」

 

紅玉オーナー・高橋基さん
紅玉オーナー・高橋基さん

 

  基さん「左上はキャベツのサラダです。
     今日のキャベツは横手の佐藤久夫さんという生産者に頼んで作ってもらっています。
     私たちは横手市内の飲食店で共同して、

     時期ごとに同じ生産者にまとめて発注する、という方法を取っています。」

 


つまり、同業他社と仕入れのタッグを組み、
生産者にも同業者同士のタッグを組ませるのだという。
そこには、同業者=ライバル、という
単純な図式でない、理想的な共生関係があった。

 


  基さん「地域ごとに取れるキャベツの量や時期が異なりますし、
     こちらの注文も一定でないということが起こると、ロスが出てしまいます。
     そこで生産者側のそういったロスを減らし、
     飲食店側には安定的に新鮮な食材を供給してもらう仕組みを、
     飲食店側と生産者側で工夫しながらやってきました。」

 

 

こうして需要と供給のバランスを整えることが
生産者にとっても、飲食店にとっても、
もちろんわれわれお客さんにとっても、
いいサイクルになっているわけである。

 

基さんの視点で見ると、
「物流」もまるで生き物のようだ。

 

 

  基さん「切り干し大根とキャベツのサラダの間にあるのが、
     鶏肉のレモンハーブです。
     ここで使っているレモンは、
     和歌山県の萩野さんの作っている無農薬のレモンです。
     僕は「地域」というのは、地理上の概念だけではなくて、
     同じような状況、同じような悩みに対して、
     同じような志を持って対処しようとしている場所のことを
     「同じ地域」と言えると考えています。
     実際に
萩野さんの農園にも足を運び、

     生産者さんと話をしましたが、
     その意味で
萩野さんの作るレモンに対する姿勢や、

     農業を通して地域をどのようにしていきたいかというビジョン、
     そういったものに非常に共感し、ぜひこのレモンを店で使いたい、と思いました。
     それでレシピ開発をしたのが、このメニューになります。」

基さんは「地域」の概念を
ここまで自由に、しかし芯の通った考えのもと
自ら定義しなおしているのでした。

「地域」を考えるにあたって、
シンポジウム「辺境と芸術」のときに石倉先生が
「あたかも最初からそこに『地域』というものがあるように考えているが、
そんなものが本当にあるのか、というところから考えてみましょう」
と問題提起されていましたが、
そこから一歩踏み込んだ答えの一つが、ここにあるような気づきを得られる言葉でした。

「地域」「継承」「未来」「美味」が
ぎゅっとつまっているのが、紅玉さんのお料理なんだ。
その思いが、ランチプレートからズバッと伝わってくるのです。

 

1階店内には物販のスペースもあり、日本全国、ドイツ、イタリアなどから集めた 実のある生産者の手がける食品や食器、調理道具が並ぶ。
1階店内には物販のスペースもあり、日本全国、ドイツ、イタリアなどから集めた 実のある生産者の手がける食品や食器、調理道具が並ぶ。

 

お腹も心も満たされて、
一行は次の目的地に向かいます。


【問い合わせ先】
デリカテッセン&カフェテリア紅玉
秋田県横手市十文字町梨木字沖野66-1
☎︎0182-42-5770


                           →嘉左エ門氏とめぐる県南地域の旅 その⑤へつづく